前回まで排水管の劣化現象について見てきた。
マンンションの排水管は流れる系統により複数の異なる管材が使われており、それぞれ劣化の傾向が違うので改修時期も変わってくる。
「排水管の改修」という言葉でひとくくりにドンブリ勘定的に扱ってしまうと、改修しなくてもよい部分まで改修してしまう、というようなこともあり得る。
従って、適切な改修を計画するために、まずはその住戸の排水系統と使われている管材・範囲を詳細に「色分け」をすることが肝要だ。
そうすることによって、管理組合は現実的かつ合理的な排水管の改修を計画することができ、その結果として各戸が損のないリフォームを実現することができる。
今回は、分譲マンションに住むAさん、Bさん、Cさんの2つの実例を見ながら、その違いを考えていただきたい。
[築25年のマンションに住むAさん]
今週はまずAさんの事例から紹介していこう。
築25年の中古マンションを購入したAさんは、入居前に内装をすべて解体し、巨額を投じてスケルトンリフォームを行った。
この大々的なリフォームの設計を建築士に依頼したので、自分が望んだ通りの間取りとなり、壁紙やキッチンなどとても満足の行く出来栄えとなった。
しかし、せっかく古い床や壁を全て撤去したにも関わらず、設備配管は一切交換しなかったそうで、台所から流れる古い排水管(配管用炭素鋼鋼管)の上には元々なかった、ユニットバスが設置されていた。浴室を大きく広げたのだ。
Aさんは、この排水管の寿命がよくてあと5年であろうということは当然に知る余地もない。
この3年後、排水管からの漏水事故が数件続けて発生したため、管理組合は排水管の更新工事を実施することに踏み切るのだが、Aさん宅の新しいユニットバス下を横断する古い排水管も更新しなければならないことになる。
排水管更新のために、まだ新品に近い大きなユニットバスをいったん解体せざるを得ないことになってしまったのだ。【写真①】
そして、そのユニットバスの解体復旧費用の負担は、古い排水管の上にユニットバスを設置してしまったのはAさんなのだし、専有部分である枝管の更新のためであることなどの理由から、Aさんが自ら負担することになった。
実にお気の毒な話である。
【写真①】
築25年のマンションでスケルトンリフォームを行ったAさん。ユニットバス下の排水管は更新しないで、その上にユニットバスを設置してしまった。
Aさんいわく、「不動産屋も建築士も管理組合も、この排水管の寿命が残りわずかであることを教えてくれませんでした。いえ、教えてくれなかったのではなく、誰も知らなかったのでしょう」
次週はBさんとCさんのパターンを紹介していく。