今回からは、いよいよ排水管を改修するステップに入っていく。
まず最初は、室内で実際に行われている工事の状況を見てもらい、
排水管改修工事とはどうゆうものなのかイメージを付けてもらいたい。
【排水管更新工事の現場状況】
排水立て管は「共用部分」に属するものの、専有部分である各室内に設置されている。
従って、共用立て管の更新には、縦系統毎に順番に入室しなければならない。
この「指定日時での入室」というのが管理組合と居住者と施工者にとっての1つめのハードルとなる。
そして、室内の立て管のほとんどは壁で囲まれたパイプスペ-スの中に隠れているので、
まずはパイプスペ-スの壁を解体しなければならないのだが、
大抵はその壁の前に、便器や洗面器などが設置されていることが多いので、
その場合はそれら器具類をいったん取り外さないと壁を解体できない。
このように、排水管を更新する以前に、内装の解体・復旧や器具の脱着など余計な工事がつきまとってしまう。
これを「道連れ工事」と呼ぶが、この道連れ工事の大小が、そのまま工事費を大きく左右することになる。
内装の仕上げは、各戸が実施したリフォームにより様々となっているので、
復旧仕様のグレード設定や範囲の決定は、管理組合内部でよくよく検討しなければならないので、
これも悩ましい2つ目のハードルとなる。
また、器具を取り外したり立て管を切断したりするので、当然に縦系統で排水が流せなくなる。この生活支障への対策も考えなければならず、管理組合にとっての3つ目のハードルである。
まずは標準的な更新工事の事例として、
①内装を壊す
②排水管を取り替え
③壊した内装を元に戻す
というような単純な事例を見てもらい工事の実態を知ってもらおう。
今回は ①内装を壊す から紹介していく。
[1]工事場所の養生
まずは玄関から工事場所まで作業員が出入りする部分の床・壁などを養生する。
この養生はとても大切で、経験が豊富な工事会社とそうではない工事会社とでは雲泥の差が出る。
住みながらの工事ということに対する姿勢と経験がものをいう。
※室内をプラベニアなどで養生する
[2]器具の取り外し
この事例では、便所の壁の向こう側がパイプスペースとなっていたので、便所の奥側の壁を解体する必要があるのだが、壁の前に便器があるので、まずは便器を外さなければ始まらない。
この瞬間から当該住戸の便器が使えなくなる。
この生活支障への対策は重要であるので別稿で詳しく紹介していく。
※便器を取り外して,壁を解体する準備を始める
【3】取り外した器具の仮置き
取り外した器具は、どこかに仮置きしなければならない。
便器の場合、共用廊下や浴室内に仮置きされることが多いが、
外部に仮置きする場合は毛布で完全に覆うなどの配慮が望まれる。
奥様は汚れた便器を隣人に見られたくないものだ。写真は配慮が中途半端な例。
洗濯機や洗面化粧台の場合は、室内に仮置きされる場合もあるが、
その場合は室内に仮置きするスペースをちゃんと確保してもらうよう、
あらかじめ居住者に伝えておく必要がある。
【4】壁の解体
壁を壊すと、やっと排水立て管が見えてくる。上側の写真は木造壁の場合。下側はコンクリートブロック壁の場合。
壁の造りの違いでコストや工期が大きく変わってくることは想像つくであろう。
コンクリートブロック壁の場合は、解体時の騒音や埃が発生するので、養生も気をつかう。