シリーズ第2弾は「排水管について」
はじめに排水管の種類の説明から
まず下表を見てもらいたい。排水管で使われている管材はこんなにも種類が多い。
そして、一つのマンションにおいて使われている管材は一種類ではなく、系統などの違いにより複数の異なる材質が使われているのである。材質が異なれば当然に寿命も異なる。
排水管の寿命を見極めるには、この系統に何の管材が使われ、それがどのような接合方法で施行されているのかを知るのが始まりである。
◇配管用炭素鋼鋼管(JIS-G-3452)の腐食
歴史の古い配管材で、「白ガス管、SGP、鉄管」などと呼ばれ、雑排水管(台所・浴室・洗面・洗濯からの排水)や通気管を中心に昔から多用されてきた。
鋼管の内外面ともに亜鉛メッキが施されているだけであるので、全面的な腐食が生じてしまい(写真1)、ドレネージ継手による「ねじ接合」の場合の接合部分は、ねじ切り加工により元々半分程度の肉厚しかないので、腐食減肉による漏水が生じやすい。(写真2)
写真1)
配管用炭素鋼鋼管の管内全面腐食
写真2)
配管用炭素鋼鋼管とドレネージ継手 腐食によるねじ部の消失
最も寿命が短いケースは、台所からの排水が単独で流れる部位で、築25年程度で更新を迫られることも少なくない。逆に、台所排水が流れてこない浴室や洗面、洗濯排水の部位で使用した場合は、30年を経過してもあまり腐食していない場合もある。
耐用年数としては、おおざっぱに25年程度といわれる場合があるが、前述のように流す排水の種類によりかなり差があるので分けて考えるべきだ。
配管の腐食はこの他にも、写真3のように配管製造時の電縫部分に沿って真っ直ぐ溝状に集中腐食が生じ、漏水に至ったケースもある。 「電縫部を配管の下側6時の部位にもってきているからで、12時の部位にくるよう配管することは昔は常識だった」と、修理にきたベテラン職人は言う。
昭和50年代後半に入ると耐食性を向上させた他の鋼管類が普及することで使用が減り、現在の新築マンションでは使用されていない。
この配管用炭素鋼鋼管を使用されているマンションが、まさに今現在、苦労しながら排水管の更新に取り組んでいるのである。
写真3)
配管用炭素鋼鋼管の溝状腐食
◇漏水に気がつけない怖さ
『最も怖いことは、漏れることよりも、漏れていることに気がつかないことである』 排水は、給水のように管内に常時圧力がかかっている訳ではないので、微量な漏水は潜在化し、じわりじわりと住居を蝕んでいく。
[事例①]
○東京都、築30年、1000戸、14階建て、団地型マンション
雑排水管(配管用炭素鋼鋼管)の更新工事の最中、保温材を剥がしてみると、スラブ下天井横引き管の側面に穴が開いていたが、奇跡的に漏水は発生しなかった。
排水の量が腐食穴の位置を超えることが少なく、保温材が多少の漏水を防いでいたのであろう。
[事例②]
○東京都、築26年、100戸、6階建てマンション
雑排水管(配管用炭素鋼鋼管)の更新工事の最中、コンクリートブロックで囲まれたパイプスペース内の立て管から、既に微量の漏水が発生していることがわかった。居住者にわかる被害として現れていなかったので、工事を実施して初めてわかった。
パイプスペース内は湿っており、小バエが繁殖していた(右側ブロック壁にある黒い小さな点は全て小バエ)
次回も“排水管の腐食について”
実際にあった事例を元に紹介していく。