前回の残念な修繕工事事例パターン1~2はご覧いただけましたでしょうか?
その他のパターンの事例を見ていきましょう。
[パターン3:想像力の欠如]
<写真9>
○都内、3階建てのマンション
給水方式を直結方式に改修したので、高置水槽が不要となったが、水を抜いたまま撤去しなかった。
強風で落下したが、幸いにも電線に引っ掛かりけが人は出なかった。
この水槽の問題については、このシリーズで詳しく述べていきたい。
[パターン4:直すべき所を直さない]
<写真10>
○都内某マンション 築40年程度、室内の床コロガシ給水管
居住者いわく「うちは5年前に大がかりなリフォームをしたので、その時に室内の給水管を全部交換した」
しかし、実際は床の中に更新されていない給水管が残っていた。
<写真11>
○都内大型マンション 築30年程度、室内の排水枝管
やはり同じように居住者は「リフォーム時に室内の排水管を全部交換した」と主張された。
しかし、共用立て管から50㎝程度の枝管は腐食した管が残っていた。
ブロックで囲われたパイプスペースの中まで更新する必要はないだろうとリフォーム業者は、勝手に判断したのであろう。
「こういう事情だから、この部分はこうします」という説明をするだけで、以後のことがだいぶ変わってくるものだ。専門家の説明責任は重要だ。
説明責任とはなにか。この重要なテーマについても触れていきたい。
[パターン5:住民の気持ちがわからない]
<写真12>
○都内某マンション 築30年程度
台所排水管を鉄管から塩ビ管に更新されていた。
しかし、長年使ってきた汚れた排水管を撤去せずに床の中に置いていった。
気持ちの悪いものである。
[パターン6:もはや配管工事とは呼べない]
<写真13>
○都内某マンション 昭和43年竣工(築44年)
築40年目である平成21年に排水管の漏水対策としてライニング更生工事を行ったそうだ。
配管の腐食による摩耗は既に激しく、更生工事は適用不可能と判断されそうであるが、ライニング業者は問題ないといっていたので実施した。
その結果、やはりライニング施工中に管接合部にかなりの数の穴が開いたが、その都度、業者のいう「専用のテープ」なるもので穴を巻いたそうだ。穴はあちらこちらで開き、終わってみれば、大半の排水管は巻かれたテープだらけとなってしまった。
とりあえず、漏水は止まったが、配管の強度は低下したことであろう。管内面の排水の流れも心配だ。
居住者いわく「だったら、最初からテープだけでいいじゃないか!」
叫びたい気持ちはよくわかる。
そのライニング業者は翌年に倒産した。
これだけを取って見てしまえば、悪質な施工事例集で終わってしまうかもしれません。
しかし、その背景にあるものは、発注者である、管理組合側にも問題があるのです。慌てて工事をするから、「片手落ち修繕」や「目の前だけの対処療法」を選択せざるを得なくなるのです。
「設備の改修なんて、水漏れが起きてから考えればいい」という人もいます。そのような「事後修繕」という考え方もあるでしょう。けれど、だいたいがこれまで見てきたような実情に陥るのです。その結果、再度工事が必要になり、結果として無駄なお金を使うことになるのです。(その無駄であることさえも気がつかないことでしょう)
特に分譲マンションにおいては、漏水などトラブルが発生する前に「計画的に改修」することが大切です。
分譲マンションの改修工事は、いろんな考え方をもった、多くの居住者の期待のもとに行われるひとつの事業です。行き当たりばったりの修繕を繰り返していては、不完全なものとなり、結局は二度手間工事となり、管理組合の経営に大きな影を落とすことになるのです。
次回テーマは「排水管について」